清月の目には一瞬、得意げな光がよぎった。「わかったわ」由佳は9時ごろ警察署に到着した。歩美に面会したいと申し出たところ、対応した警官は一瞬ためらった。「現在、歩美は二件の刑事事件に関わっています。本来なら面会は許可できないんですが……由佳さん、まず局長に相談してみてはいかがでしょうか?局長の了承があれば……」由佳は局長が昨日、部下に伝え忘れていたのだと思い、「叔父は今、いますか?」と尋ねた。「局長は上の階にいますよ」「ありがとう」由佳は二階へと向かった。局長室のドアはわずかに開いており、隙間から中の声が聞こえてきた。近づくと、聞き覚えのあった声が耳に入った。「翔は山口家の長男です。私たちは彼が破滅するのを見過ごすわけにはいきません」「どうせ古い事件です。由佳以外に気にしている者などいません。清次も当然兄に味方します。策を練ったのも彼で、すべてが完璧です。由佳さえも信じ込んでいます。局長、どうかお力添えを。由佳には疑う理由などありません」「清次と歩美の関係もご存知でしょう。彼らは既に別れましたが、公の目には彼らが関連付けられやすいです。歩美が刑事事件に関わっていることは、清次のイメージにも悪影響があります。清次は彼女と縁を切りたいのです。歩美が長く刑務所に入ることになっても、世間は気にも留めません。出所したら補償を与えればそれでいいのです」「成功すれば、山口家からの謝礼は必ずあります」局長は冷静に答えた。「清月さん、あなたの気持ちは理解しますが、その提案はお受けできません。この警察の制服を着ている以上、僕はそれに背くことはできません」清月の言葉が一語一語耳に届くたび、由佳の体はまるで氷の中に投げ込まれたかのように冷たくなっていった。防寒のコートを着て暖房が効いていたのに、彼女は凍えるような寒さを感じ、体が震えた。歯がかみ合う音が響いた。「どうせ古い事件。由佳以外に気にする者などいない」「清次も当然兄に味方する。策を練ったのも彼で、すべてが完璧だ。由佳さえも信じ込んでいる」それでは、父の死の主犯は翔なのか?清次は翔の関与を知った上で、それを彼女に隠し、時間を稼ぎながら責任を他へ転嫁しようとしていたのか?しかも、歩美が陽翔に情報を漏らしたことを利用して……普段なら、由佳は清次がそんなことをする
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