「僕たち、みんな厚かましいよね」「私は君とは違うよ」清次は黙って笑っていた。数分後、他の親子連れが数組やってきて、小さな列車は乗客が揃って、発車の準備が整った。由佳と清次は車内に座った。モール内を一周する小さな列車がゆっくりと動き出した。小さな列車の音が聞こえると、道を行く人々が足を止め、ちらりと視線を向けた。由佳と清次を見かけると、二度見する人も多かった。若者たちは二人の容姿に見とれ、小さな列車に興味をそそられる様子だった。年配の人々は、彼らの年齢で小さな列車に乗る姿が珍しいと感じたようだった。特に、年配の男性たちは、清次のような年齢の男性が小さな列車に乗るなんて幼稚で、男らしさに欠けると思っている様子だった。顔は整っているが、なんだか頼りなさそうだ、などと思われているようだった。由佳は表情を変えずに清次を横目で見た。彼は真面目な顔で前を見据えていて、周囲の視線に動じる様子もなかった。由佳は小さく鼻を鳴らした。その時、清次が突然、彼女の頬にキスをした。由佳は心臓が一瞬止まり、彼を急いで押しのけ、誰かに見られたかどうかを慌てて確認した。視線が何人かの通行人と一瞬交差し、由佳は冷静を装いながらも、清次の太腿に数回つねるようにして応戦した。一周が終わった。二人は小さな列車から降りた。「まだ何かしたい?」清次は笑みを浮かべて尋ねた。由佳は彼を睨みつけると、そのまま無言で歩き出した。清次は少し距離を保ちながら後をついていった。数分後、由佳は一列に並ぶクレーンゲーム機の前で足を止めた。彼女は清次に振り返り、「これ欲しいの。取って」と言った。清次はゲーム機の前に立ち、少し戸惑いながら「どうやるんだ?」と尋ねた。山口グループの会長である彼にとって、クレーンゲームは初めてだった。由佳が機械の角にあるQRコードを指差した。「これをスキャンして、コインに交換して」一回につき20円だった。手順通りに清次は20枚のコインを交換した。十回試しても、一つも取れなかった。十回目で、清次は眉をひそめ、レバーを力強く動かしたが、出口近くまできたぬいぐるみがアームから落ちてしまった。「このアームが悪い」清次はぼそりと言った。由佳は彼を一瞥し、「取れないからって言い訳しないでよ?」と返した
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