Howls of war

Howls of war

last updateLast Updated : 2023-06-12
By:  THUNDER PEN Ongoing
Language: English
goodnovel16goodnovel
3
1 rating. 1 review
40Chapters
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Synopsis

Lyra is a powerful and independent werewolf living in a world where arranged marriages are the norm for those of royal blood. When her stepsister instigates her destined mate to reject her, Lyra is forced to intervene and take his place to save the only family she has. As she begins to train with a group of rebel werewolves seeking to overthrow the oppressive monarchy, Lyra discovers a shocking truth about her past that threatens to upend everything she thought she knew. Determined to take control of her own destiny and help her fellow werewolves, Lyra teams up with a human detective named Alexander to investigate a series of murders and disappearances in the werewolf and vampire communities. As they work together to uncover the truth, Lyra and Alexander develop a close bond that is tested by their conflicting loyalties. As the investigation leads them deep into a web of lies and deceit, Lyra finds herself caught in the middle of a dangerous power struggle between the ruling werewolf monarchy and a powerful vampire clan. With the fate of both communities hanging in the balance, Lyra must navigate treacherous alliances, dangerous enemies, and a growing attraction to Alexander as she fights to protect those she loves and discovers the true meaning of family and loyalty.

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Chapter 1

the escape

私、天野悠(あまの ゆう)が出所したのは、折しも大晦日のことだった。

その日、迎えに来るはずだった婚約者の佐伯桐矢(さえき きりや)は、別の女と過ごす年越しに夢中だった。

私が記憶を頼りに家へたどり着いたとき、彼は早坂莉奈(はやさか りな)と親密に抱き合っている真っ最中だった。

「桐矢、今日、悠さんの出所日だろ?迎えに行かなくていいのかよ?」

仲間の問いかけに、桐矢は鼻で笑った。

「あいつを迎えに行くより、年越しの方が大事に決まってる。

何年も塀の中にいたんだ。いまさら一日くらい増えたって死にやしねえよ」

「悠さん、怒るんじゃないか?」

窓の外で吹き荒れる風雪よりも冷たく、私の心に突き刺さったのは、桐矢の薄情なその言葉だった。

「あいつが自分で招いた結果だろうが。どの面下げて怒るってんだ。

俺がこうしてまだ受け入れてやるってだけでも、ありがたく思えってことだ」

その言葉が終わるやいなや、桐矢はふと戸口に立つ私と目が合って、顔から笑みを消した。

部屋の無機質な照明が冷たく私の姿を照らし出し、心もまた冷え切っていくようだった。

桐矢はまだ、私を「受け入れてやってもいい」と思っているようだった。けれど、私の方はもう彼を必要としていなかった。

……

一瞬、その場の空気が凍りついた。

真っ先に我に返った桐矢が、大股で私へと歩み寄った。

肩までのショートヘアに流行遅れの古着をまとった私は、華やいだ雪の夜にあって、あまりにも場違いだった。

桐矢は一瞬ためらうそぶりを見せたが、すぐにそれを振り払うかのように、私の体をそっと抱き寄せた。

「どうして……迎えを待たなかった?」

頭上から降ってくる男の優しい声に、私は一瞬、心が揺らいだ。だが、脳裏には先ほどの光景が鮮明に焼き付いて離れない。

「ううん、平気。道は覚えてるから」

嘘だった。雪に打たれながら刑務所の門前で、私はずっと彼を待ち続けていたのだ。見かねた年配の看守がタクシーを呼んでくれるまで。

桐矢の肩越しに、私の視線はその背後に立つ女――莉奈の姿を捉えた。

莉奈は完璧なメイクを施し、鮮やかな赤の高級ブランドスーツに身を包んでいる。私の視線に気づくと、彼女は即座に瞳の奥の憎しみを隠し、にこりと作り笑いを浮かべた。

「あら、悠さんじゃない。

出所なさったのね、すごい偶然。

ちょうどお正月にも間に合ったし、これは……ダブルでおめでたいってことかしら?」

言い終わると、莉奈はすっと立ち上がり、桐矢の腕にこれみよがしに自分の腕を絡ませた。その瞳には、あからさまな挑発の色が揺らめいていた。

私はかろうじて唇をきつく結んだ。

桐矢は莉奈に腕を絡ませられたまま、もう片方の手で乱暴に私の腕を掴むと、皆が集う輪の中心へと半ば強引に座らせた。

莉奈は桐矢の親友である本田相馬(ほんだ そうま)と、示し合わせたように目配せを交わした。

相馬はすぐに合点がいったというように、人を小馬鹿にしたような嫌味な笑みを浮かべ、私を値踏みするように見つめた。

「へえ、この方が例の許嫁さん?三年ぶりでしたっけ?

いやあ、ずいぶん老けましたね。莉奈さんの隣にいると、正直、母娘かと思いましたよ」

甲高い嘲笑が部屋に満ちた。莉奈は顔を赤らめ、恥じらうように相馬の肩を軽く叩いた。

「もう、相馬ったら、何言ってるのよ」

そう言いながら、莉奈は私に向き直り、猫なで声で囁いた。

「若い男の子って、すぐこういう冗談を言うの。悠さん、どうかお気になさらないでね」

嘲笑の声は、プロジェクターから流れるBGMさえもかき消すほどだった。込み上げてくる屈辱と怒りに、私は爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。

私が押し黙ったままでいると、桐矢が苛立ったように、肘で軽く小突いてきた。

「みんな仲間内の冗談だろ。場をしらけさせるなよ」

桐矢の言葉は、まるで鋭い刃のようだった。それが私の心を容赦なく切り裂き、刺すような痛みが胸の奥に広がっていった。

他の誰に何を言われようと構わない。だが、桐矢だけは違うはずだった。彼こそが、誰よりも私を理解し、どんな時も揺るがぬ味方でいてくれるはずの人間だったのだから。

それなのに今、私のこの苦しみは、彼にとってはただの気晴らしの冗談の種でしかない。

込み上げる感情を悟られまいと、私は無理やり話題を変えた。

「……お母さんは?」

桐矢の目に一瞬、後ろめたさがよぎったが、彼はすぐにそれを取り繕うように言った。

「ああ、お義母さんなら、静かな方がお好きだから、ここにはいらっしゃらないよ。また日を改めて、俺も一緒にお伺いしよう」

私は小さく頷いた。すると桐矢は、私の薄着に気づいたのか、上着を取ってくる、と寝室へ向かった。

莉奈たちとだけこの場に残されるのは耐え難く、私はとっさに化粧室へ行くと言い訳を残して席を立った。

冷たい水で顔を洗おうとした、まさにその時だった。

背後から、声が投げかけられた。

「――147番」

身体が、本能で反応した。私は瞬時に振り返り、直立不動の姿勢をとっていた。

「はいっ!」

「ぷっ!」

莉奈の甲高い笑い声が響いた。口元を押さえてはいるものの、その声は、私の耳に突き刺さった。

私の濡れた髪先から、ぽたり、と水滴が洗面台に落ちた。私は目の前の女を冷ややかに睨み据えた。

「何が、そんなにおかしいの?」

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Comments

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Frank Samuel
very good like the novel
2023-05-29 03:10:54
1
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